『Alice』/川村 透
 
の頂きの、<乳首・摩天楼>、の刺々しさを揉みしだきながら
僕は、
女の街に墜ちてゆく両手のないビーナスのように上半身だけの石膏の像となって。
風を切る銀の耳にびょうびょうと渡る鶴の声、ぴん、と張りつめた弦楽器の心地良さ
に包まれながらきりきり舞い落ちる、夜の底はぐるぐると近付くスパイラル・ダイブ
雲を軽やかに抜け、アクリルの小片みたいに濡れた光が、ちかちかちかと大きく育ち
鼠色の街の部品たちが瞬く間にガリバー化して僕を飲み込んでゆくんだくっきりと。
あのオフィスビルが山が木が海が河が瓦がネオンが車がヘッドライトが靴が煙草が。



僕は女の背中の夜の街に舞い降りた両手をなくし
[次のページ]
戻る   Point(6)