小説の習作 原稿用紙八頁 #04/田中教平
 
考えが勝手に動き出す。事業所のこと、カナの怒りのこと、昨日の自分の行動。どれも重たくて、手に負えなかった。
階段の方から、そっと足音がした。カナだ。
「大丈夫?」
扉の向こうから声だけが届く。
「うん。ちょっと休んでるだけ」
声は出たが、自分の声ではないように聞こえた。
カナはそれ以上何も言わず、階段を昇っていった。
その気配が消えると、ユウスケは机の上の「こころ」を手に取った。読みかけのページを開く。文字が目に入るのに、意味が頭に入ってこない。ページを閉じる。
雨はまだ降っている。
ユウスケは、今日という一日が長くなる予感を、静かに受け入れた。
 ユウスケはノートパソコンを立
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