咲子?/たま
 
ちどでいいから、標準語で暮らしてみたかったの……ね、リクオさんはどうなの? いつから東京にいるの?」
「ぼく? ぼくはさ、高校を出て、専門学校に通って就職したのがいまの会社……家から通うのはちょっととおいから、下宿しただけで、べつにふるさとを出たいとか、そんなのなかったよ」
「ん、……リクオさんとこはさ、東京みたいなもんでしょう?」
 たしかにそうだった。わたしは関東平野のどまんなかにある、山も海もない平らな町で、青臭い芝生のように空ばかり見て育った気がする。そんなわたしのふるさとにも方言はあったけれど、いまはもう東京のことばに呑み込まれてしまって、地元でもほとんど聴かなくなっていた。

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