咲子?/たま
とはたくさんいるのに、セリフを書かない脚本家はひとりもいない。もちろん、それはわたしの僻みでしかないけれど、ノートをひらいて詩を書いている咲子を見ていると、なんとなくうらやましくなるのだった。
咲子の実家は酒屋だった。
三代目だという父に嫁いだ母が、父と共に家業を守りつづけていたが、咲子の母が亡くなってからは、五つ年上の姉が家業と家族の生活を支えてきたという。高校を卒業した咲子は、地元の漁業組合に就職するが、どうしても郷里を離れたいというおもいが募って上京する。
「どうして? ふるさとはきらいだったの?」
「ん、……だってさ、あそこにいたら一生東北弁でしょう? あたしね、いちど
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