区域B/後期
は安心して耳を向ける。だが、「分かるかもしれない」という感覚が生まれた瞬間、音は途切れる。指揮者は腕を下ろし、演奏者は楽器を構えたまま動かない。拍手は起こらない。沈黙が、曲の最後として扱われる。楽譜を見ると、続きが欠けているのではなく、続けなかった場所が丁寧に残されている。
小説家は最後まで書く義務がある。途中でやめるのは怠慢とされる。しかし、最終章を提出すると、必ず呼び出される。編集官は原稿を読み終え、特別な感情を示さずに言う。
「この結末は理解できます。書き直してください」
理解できるという評価は、ここでは失敗を意味する。作者は自分がどこかで意味をまとめてしまったことに気づく
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