幾春別/伊藤透雪
る父の背中が、おう、と言う。
遊びに行くなら場所言って行きなさいよ、と
母の声が奥から聞こえてくる。
私は、公園行ってくる、と言いながらランドセルを
放り投げると、外に出て道端の草を折って唇に咥え
ながら、妹はもう出て今いないと気づいてスキップ
しだした。気が楽だ。
友達と出かけ始めた妹は、行先を言わずに飛び出し
て、いつも父に怒られている。夕方、桂沢へ向かう
十字路で流れる「家路」が終わって暗くなるまで、
帰ってこないからだ。
両親は幾春別川の流れが急なのと、
滝があるから心配なのだろう。
夏、公園に盆踊りの櫓が建てられ、父は上機嫌だ。
私と妹は浴衣を着せて貰う
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