アルゲリッチのラフマニノフ「ピアノコンチェルト第3番」を聴いてみる。/洗貝新
て、しばらく聴き続けていると、その異様と思える違いに驚いてしまった。
最初は、そのめまぐるしいほどによく廻る速いパッセージと少し乱暴にも思える迫力から、
オーケストラとズレているのではないか、と思ったほどだ。
しかし、徐々に彼女の演奏の魅力に引き込まれてしまう、その気迫はまるでオーケストラに向かって、わたしに付いてこい! そう言ってるような自信に溢れる演奏だ。
それは僕の耳も同様で、はじめは聴き慣れない演奏に付いていけなかっただけで、
気がつくと彼女の奏でる魔法の虜になっている。
当時男性中心のベルリンフィルの重厚な演奏に一歩も引けをとっていない。
その多彩で、ときには激しく打ちつけ
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