渡り損ね  蒼風薫/梅昆布茶2
 
ればトーストを焼いて

父さんはそこの食卓で新聞を読むふりをして


実は母さんと結婚したことが嬉しくてたまらないのを


男らしく  胸に秘めている



少女の他に子供のいない家庭で


少女は確実に両親の愛を獲得しているはずなのである


かそけき幻想から落ちた時

泣いて見た少女は決心した

この想いは決して


詩には詠むまいと

  立ち去ってください


青ざめた菫に

そういえば遥かな頃

挨拶をしたことがあった

わたしが


まだ10代の蒼いころ
誰にも知られずに

思い詰めた心を殺し


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