渡り損ね  蒼風薫/梅昆布茶2
 

その

水面には

睡蓮が宝石のように眠り

ああ  今日も半分


過ぎていった

戸惑いの一歩手前で

風が囁いてそよいでさりし悲しみ
夢幻の儚さを知る


風が

時候の挨拶でもなく

一日の時計に合わせた挨拶でもなく

アルトの声が懐かしく


わたしの耳は菫となって

あの  春に

帰ってゆく  葡萄色の夢



心の地平に涯を尋ねながら


きっと詩を書いてるらしい少女は

ぶどうのジュースが好きであるそのジュースの

果てない色の中に

夢の家庭の温もりを知るから出ある

母さんが朝になれば
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