全行引用による自伝詩。 04/田中宏輔2
志訳)
目を開くと、頭上に薄青い空が広がり、ちらほら雲が見えた。周囲は牧草地だった。みつばちたちが、いや多少ともみつばちのように見える昆虫の群れが、茎が長く皿ほどもある白い花のあいだをぶんぶん飛びまわっていた。空気には甘い香りがただよっていた。さながら無数の花々が大気そのものを妊娠させているかのように。
(フィリップ・K・ディック『カンタータ百四十番』4、冬川 亘訳)
精子も自分をひとかどのものと思うだろうか?
(ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア『一瞬(ひととき)のいのちの味わい』4、友枝康子訳)
彼の目は、少女の白いシャツからのぞく喉もとを楽しんでいる。
(ジェ
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