全行引用による自伝詩。 04/田中宏輔2
ンスティトゥシオン広場のベンチに腰をおろして考えた。そのあと部屋に戻ったが、いつになく孤独感を味わっていた。本に没頭しているときだけはふたたび現実を見出すようだった、逆に、通りにいる人々はまるで催眠術にかかった人間たちの大きな夢に思えた。多くの歳月が流れて分ったことは、ブエノスアイレスの通り、広場、そして商店、事務所にはそのときわたしが感じたことと同じようなことを感じ、考えている人間が無数にいるということだ、孤独で苦しんでいる人々、人生の意味、無意味を考えている人々、自分のまわりで眠った世界、催眠術をかけられたりロボットになってしまった人間の世界を見ているような気がしている人々がいるのだ。
そ
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