全行引用による自伝詩。 04/田中宏輔2
その孤立した角面堡の中でわたしは短篇を書きはじめた。いま思うと、不幸になるたびに、一人ぽっちだ、生を与えてくれた世界としっくりいかない、そう感じるたびに書いてきたみたいだ。それが普通ではないだろうか、現代の芸術、引き裂かれた緊張した芸術は常にわたしたちの不調和、苦悩、不満から生まれてくるものではないか。人間という傷つきやすい、落ちつかない、欲深な生き物の種族が世界と和解する試みのようなものではないだろうか。なぜなら、動物は芸術を必要としない、彼らは生きるだけだ。彼らの生は本能の必要性と調和を保ちながら滑っていくからだ。鳥には少しの種か虫、巣をかけるための樹、飛びまわるための広い空間があればいい、
[次のページ]
戻る 編 削 Point(10)