全行引用による自伝詩。 04/田中宏輔2
 
イト』第二部、飯田隆昭訳)

 私は丸い小さな箱をもっている。中には羊皮紙に似た紙に数多くの光景が描かれ、折りこまれている。紙をめくるとそれが生き生きと動きだす。前髪のところまでコンクリートの中にはまりこんでいる雄牛が数頭いる。今度は十八世紀の衣装をまとった二人の少年と二人の少女が金色の馬車からおりてきて裸になり、オルゴールの調べに合せて踊り、つま先でくるっと回転する。
(ウィリアム・S・バロウズ『シティーズ・オブ・ザ・レッド・ナイト』第三部、飯田隆昭訳)

 私は傾斜の険しい木の段々を昇り、かつての玄関ポーチへ行く。金網はすっかりさびていて、網戸の蝶番ははずれている。南京錠をはずし、玄
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