回帰/月乃 猫
誰もが知る肌に
夏の落ち着きを失った季節は、
陽のわずかな傾きに
秋を告げる
沈黙をやぶる囁きに
自問自答をとめる
潮の香りは、さやけき潮の音
反射する 陽炎のひかり
銀鱗の幾多の傷は、生きている証し
それぞれの命が海遊を終える時を
迎え
確かに
素直に
思うことは、
この身の生まれ故郷は、遠い
幾千キロ先 の川瀬
野生は、
懐かしい
その一点に向けて
立ち止まることもなく
休むこともなく
息つくことも
眠りの安らかさもなく
回帰をもとめ
人生の影をみつめ 仕事を終えた人々が
最終の下りの電車に乗り込むように
帰路につ
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