夜でなく、夢でもない。/中田満帆
って来た。ハタチ前後の女の子で、なんだか愉しそうだ。駈け足でやって来て、わたしをメイク室に連れていった。そしてわたしの顔から死に顔を拭い、衣装を替え、別室に連れてゆく。長い廊下を、真っ白な廊下を歩いていったさきは第3スタジオと書かれていた。なかを覘くと数千ものひとびとが犇めいている。ミホちゃんがわたしにアコーディオンを手渡す。
みなさん、もう演奏の準備に入ってますから。
え?
楢崎さんもみなさんと一緒に演奏してください。
おれ、アコーディオンなんて触ったこともないんだけど。
大丈夫ですよ、ここ地獄なんで。
そういうと、ミホちゃんはいなくなった。というか
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