夜でなく、夢でもない。/中田満帆
うか、消えた。なんやねん、これ。なにが大丈夫やねん。わたしは老若男女とともに列に加わった。指で鍵盤を叩く。まるでじぶんの思念に従うように楽器はわたしの思い描くとおりの音を奏でている。なんてこった。やがて全員の思念が一致してひとつの音楽になる。わたしは──いや、おれはもう虚飾を脱ぎ捨てて、一心に弾く。美しすぎる情景がスタジオに広がる。でもこれは夢じゃない。おれの頭に仕込まれたキーボードとPCにひとつの物語が書き込まれてゆく。なにもかもまったくあざやかな色をして回転する。ミラーボールと心臓がまぐあい、そして同一化する。いままでになかった演技論、映像論が生まれ、カメラがパンニングを繰り返す。法衣を来た撮
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