夜でなく、夢でもない。/中田満帆
カーット!!
もういいだろう!
そうだな。
照明をつけて!
死ではない、なにかの声がひびいた。わたしが眼をあけて起きあがると、見も知らない劇場にいた。とても古い建物で、内装はひどいものだった。罅や汚れ、黴や、死の臭いがした。明るい照明のなかから男たちがやって来る。
いい演技、いい人生だったよぉ。
え、──そうですか?
ホントホント、いままでいろんな死を監督してきたけど、これはモノホンだねぇ。
ありがとうございます。
おい、ミホちゃん!
メイク室に案内して!
「はぁい!」という声がして、そのミホちゃんがやって
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