夜でなく、夢でもない。/中田満帆
で、わたしは気を喪った。気づくと、車から降ろされ、わたしはかつてのように『江戸前握り えびす』のまえで立っていた。黒い霧がわたしをとりまいていった。「金はおれたちがだす。あんたは好きなだけ喰えばいい」と。店は開店していた。わたしは入る。そして1時間ばかり喰い尽くした。気づくと霧はその姿を警官に変え、おれをまた車に乗せた。そしてそのままアパートにもどった。室まで連行されながら、わたしはだんだんと死ぬのが厭になってしまっていた。
作家さんよ、死ぬ気をしっかり持って生きろよな!
そうだ、おれたちが憑いてるんだからな!
これはわるい冗談にちがいない。だいたい死がなぜひとのかたちをして喋
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