夜でなく、夢でもない。/中田満帆
 
リカーショップで車が駐められた。おれはたったひとりで酒を買った。ジンジャーワインのストーンズとシロック・ウォッカだ。口のなかが唾液でいっぱいになる。飲酒の欲求で脳髄がはち切れそうだ。たしかに1年は長かった。しかし、実際に酒を手にとってみれば、そんなもの一瞬のように感じられる。
   なにが喰いたい?──いや、そんなことはわかってる。
  この時間は鮨屋なんか開いてないよ。
   心配御無用!──いい店があるんだ。
 運転しているやつがなにかのボタンを押した。すると、車体がゆっくりと浮上し、そのまま空を貫いた。心臓が倍になったような感覚が襲う。腕時計の針がみるみる上昇する。そして強い衝撃で、
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