element/こしごえ
 
うかじゃないかね。自分自身の世界をもつこと。火には、火の世界。水には、水の。どうだろう?参考になるかどうか。ね」
老人は、真剣な表情で聞いていた女の目を覗いた。
「・・・自分の世界をもつこと!?」
そう言いながら、女の目の焦点は、老人の目の遥か向こうにあるようだった。
「分かったような気がします。ありがとう」
老人は、ニッと笑って、顔に刻まれた深いシワをほころばせた。
 女も気がゆるんだのか、黒革のポシェットからタバコを取り出し、老人へ勧めた。
老人は、軽く会釈してから、それを受け取り、タバコに火をつけてから返した。女もタバコに火をつけて一口深く吸い込み吐き出した。吐き出された煙は、
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