element/こしごえ
いろいろと。それに古くさい響きだし・・・」
老人は、さみしそうに微笑んで。
「つらかったろうね。・・・しかし、ワシは、その名が好きだよ。白く飾り気の無い万物の根本という名だね。いい名じゃないか」
「・・・・・・はい」
と、すこしハニカミながら返事をする女。他人に、こんなふうに名前をほめてもらったことは一度もなかったと思う。
だから自然と微笑みが出た。
その笑顔を見て、老人は、静かに語りだした。
「リアルか。ワシもリアルとは無縁の生き方をしてはいるが」と前置きして。
「火を見てごらん。火は、何者にもつかむことはできないが、火自身には火の体がある。リアルとは、己自身が、あるのかどうか
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