element/こしごえ
 
している。そして、訪れることの無い死を夢見ているようだ。
そうだ。火は、死なない。たとえ消えてしまっても、エネルギーは置換され宇宙が飽和するまで黒く燃え続ける。そして地獄の果てまで燃やし尽くす。
私は、地獄を見ている。終わることのないであろう夢幻(むげん)ここに私なんていない・・・。
さみしく火を見続ける。
「火は、いい」
 ふいに老人がつぶやいた。
「えっ」と女は、思わず聞き返した。それほど唐突で老人の声は響いてきたのだ。そう、まるで地の底か空の果てから聞こえてくるような響きだ。
老人は続けた。
「火は、いい。ワシらのような肉体というものは持っていないが、心がある。自分を持
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