element/こしごえ
んでいた。
その目に惹かれて、女はさらに言葉を続けた。
「ここに座ってもいいですか?」
老人は、何も言わず、ただ、うつむいている。女は、無言の空気にうながされて老人のすこし右斜め後ろに座った。
それにしても夏の最中(さなか)に焚き火なんて暑くはないのだろうか。今日は、乾燥していて風もやさしく吹いており体感温度は、それほど暑くは感じないのだが・・・。
老人は、火から40センチほどのところに、あぐらをかいている。枯れた小さな流木から出る火は、無言の時を漂わせながら燃えて紅く透明に踊っている。
夢だ。
と女は思う。火は、この地点から、青く暗い果ての無い空へとエネルギーを放射して
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