初恋 /月乃 猫
文月の時雨 打ち水に街はひどくうたれ
ぼろぼろの学帽に 麻の手ぬぐい 高下駄で
土砂振りの雨に走り濡れる僕は、そんな僕を憧れてそうする
軒の触れ合う細い路地を 白い花水木のステインド・グラスのむこうに
丸髷の頬杖の君をみつめる
大島の紬に白い長エプロンと紅い組みひもはいつもの 鈴を鳴らすわらい
この店は固有名詞が存在せず 誰も 名前をもたず
アカイクミヒモは 若ければ 「 若旦那様、それよりも年なら 「 旦那様
そんな呼び方で客に話しかけた、
ここはパワーレス・スポット 電気も 電子もない店
携帯も使えぬ子たちは、小さなためいきと
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