「幸福の陰影」/asagohan
そこは帰りの電車の中
車窓から夕焼けの光が眩しくて
ブレザーを着た私は何かを思い出せないでいる。
黄色い稲穂が靡く
田園地帯を通り過ぎると
終点に行き着く。
降りる時に女の人が
遠くの席からこちらを見ていた。
終点なのにあの人は降りないのかと
そう考えたら
電車は走り去っていた。
そこは古い家
生徒達が私にこの町の歴史を
尋ねていた。
一通り話し終えると
生徒の一人がこういった。
「なぜ、あの御寺はたくさんのお地蔵さんで ぎゅうぎゅうなの?」
「あのお地蔵さん達は、土地に縁の持てなかった人達を鎮める為のものだよ」
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