白いシーツの波跡/まーつん
た皮膚は
用済みの包装紙
縮れた白髪は
荷を解いた麻紐
軋む骨と、ぐらつく歯で
なぜこんなことにと
掴み合い、罵りあった
鏡のない世界で
自分を観知る手がかりは
棘にまみれた相手の言葉にしかない
だが、諍いに疲れ果て
荒い息で見つめ合った時
相手の瞳の中に
自分の真の姿を見る
入り混じる光と影が
潮汐を繰り返す
小さな魂の揺らぎを
二人はもう黙り込み
痛む背中を船べりに預け
朽ちかけた甲板に足を投げ出し
見上げる夜空に促され
どちらともなく
触れた指先を
和解の印に絡ませた
二人はごろりと横になり
庇うように抱き合うと
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