天気予報の詩(うた)/大町綾音
 
定を避ける優しさと、自然への畏れと、予報士の熟慮とがまじっている。断定しないことの上品さは、ある種の文学にも似ていると思う。おそらく、日常を舞台にして生きるということは、予報と余白のあいだで揺れることなのだろう。

 祖母は、「天気予報の人の声が好き」とよく言っていた。
「今日という日の予感が聞こえるから」だそうだ。
 ラジオのそばでカーテン越しに光を見ながら、台所に立つ祖母は、午後から雨と言われれば米びつから手を離し、麦茶をつくって冷蔵庫にしまう。そんな朝の所作すら、祖母にとっては、ひとつの舞であり、祈りのようだったのかもしれない。

 思えば、天気予報は人を変える。
 恋人の傘の
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