硝子の繭/凪目
殻にひびを入れている
中身を見るまでどちらかわからないときみは言ったけど
そんなの嘘だと思う
扉を閉めたら一人になった
でも 遠くに灯りが見える
見えるからあるに違いないと思う
扉の向こうで返納をせがむ鍵束が鳴っている
返さなければならない
終わったらなにをしよう
ぼくは 踏み倒そうかな
きみも そうしたらいいよ
裂傷の縫い目に手のひらをあてて
蠢く炉の音をいつまでも聞いていた
寄せて返す波の音
岸辺には一枚の鏡が突き立っている
こもれびをまとった柔らかな姿見
鏡の向こうは嵐のあとで 水たまりが
遠くの虹をうつして きらきらとまぶしい
砂浜は亡き骸で満ち
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