硝子の繭/凪目
 
満ちている
殺虫剤で胸を詰まらせたたくさんの小鬼から
吐き出されてのたくる結晶
かけらを
拾い集めて
振り上げる
振り上げて
振り下ろす
鏡とぶつかって
鏡が割れる
ほら 見て まだ割れる
まだ もっと粉塵にできる
すべての動物の眠る雪の日みたいに
空から錆びが降り積もる

切片の卵から
体液をよじって蝶たちが
透明に内臓を塗りたくった翅を あんなにまで伸ばして
飛んでいこうとする
花粉と蜜に抱きとめられて 埋もれて
おぼれてぐちゃぐちゃになりながら
集めて 振り上げて 振り下ろしたぶんだけ
灯りが 見えなくなるまで またたいて
やがて どこかへ行ってしまう
誰もが焦がれる桃源郷 ほころびのない結末
眠りの国へ
ぼくはそんなの嘘だと思う
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