文学が救うべきものは、命ではなく物語である/鏡文志
 
る。或いは、真下の部屋で。家を変えても引っ越す度にそう言う作りになっている。両親は、息子の部屋の音が聞こえづらい作りの部屋に住むようになっている。

男が兄のいびきの音が辛いと父親に言うと、それはお前が暇だからだと語る。父親は忙しいといつも言うけれど、やっていることはテレビ鑑賞とネット鑑賞をたっぷりの年金生活。男が幼い時でさえ、ロクに働いている姿を見せたことはない。そもそもこの家がおかしくなったのは、父親が東京で働くことがイヤになって茨城に越し、その後父親がまともに働くことをやめて、家の家賃が払えなくなり、次々と引っ越しを繰り返して、その家でも父親が我と我が身の不満欲求の発散とでも言わんばかり
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