はじめから世界はこわれているから/ねことら
が嘘っぽいつくりものにみえるから、
そこに本当に存在するのか、いつも手で触れようとする。
さっき、スロットで負けたとか、
何か些細なことでアキトがすごくいらいらしていて、
部屋をばたんとしめて出て行った。
この部屋は、いまはわたしだけの世界で、
がらんとしていて、頼りなくて、安心感があった。
テレビをつけたら、ニュースで通り魔の殺人犯がつかまった、
とキャスターが話していた。
テレビのひびは治ってなくて、むしろ画面全体にうっすら広がっていて、
映し出された殺人犯の顔も、そのキャスターの顔も、どちらもひびが入って、
虹色ににじんでいた。
わたしはゆっくりたちあ
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