はじめから世界はこわれているから/ねことら
ちあがって、テレビまでの距離を確認する。
ステップで踏み込んで、腰をひねってかかとをぶつけるようにすれば、
テレビの中心に破壊がくわわって、ひびは、完全に広がるだろう。
そうして、窓の外も、空も、山並みも、道行く人も、
その中で右往左往しているアキトも含めて、
みんなひび割れのなかで、虹色ににじんで光るだろう。
わたしは安心な部屋の中で、深呼吸している。
リモコンで音量を少しずつあげていくと、
テレビは割れそうな音と色の発光体になっていく。
わたしは細く冷えた体の重さをはじめて強く感じながら、
いま、全体重をかけて、大きく右足を踏み込んだ。
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