はじめから世界はこわれているから/ねことら
 

アキトはそのとき、すごく怒って、なんでわたしがよけたのか、
大声でののしって、わたしのおなかを蹴った。
わたしは苦しくてこわくて、ごめんね、ごめんね、とくりかえして、
泣きながらソファの陰にしゃがんでいた。
アキトはいつの間にか部屋から出ていってて、
わたしはぼんやりその細く折れたひびのかたちをながめていた。

ベランダから空や山並み、道行く人の景色を眺めているとき、
急に地震が起きたり、隕石が降ってきたり、
なにかとてつもない力が働いて、
この視界が暗くうねるものに壊されたりしないのか、
不安になることがある。
わたしには、テレビ画面も、目に見えるものも、
すべてが嘘
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