イヴの手が触れるアダムの胸の傷あと ──大岡信『地上楽園の午後』/田中宏輔
主なる神はその人に命じて言われた。「あなたは園のどの木からでも心のままに取って食べてよろしい。しかし善悪を知る木からは取って食べてはならない。それを取って食べると、きっと死ぬであろう」。
(創世記二・一六‐一七)
これを愛する者はその実を食べる。
(箴言一八・二一)
地上楽園の午後。ここには二七篇の詩作品が収められている。わずか四行の短篇詩から二五六行の長篇詩まで、実にさまざまな形式や内容をもった詩作品が収められている。読み手はそれを手に取って、こころゆくまで味わうことができる。なかで、もっとも美味なるものは、二五六行にわたって展開される長篇詩「友だちがまた一人死んだ」である。
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