暇を持て余す/栗栖真理亜
 
今度はどんなうたをうたおうか
三時を少し回ったばかりの鴨川のベンチで川の香りをかすかに嗅ぎながら
風に揺らされたまま少し汗ばむ額に張り付く前髪かき揚げ
ごぉーごぉーと唸る白い水飛沫をみながら

向こう岸へ目を転じると誰もが遊べるような拓けたスペースで
ゲートボールに興じる三人の年老いた男性
あちこち行ったり来たりしながら腰を屈ませ腕を振るう

そのちょうど前辺りの小道では黒っぽい帽子をかぶって
鼠色のTシャツを着た中年の男性と
緑色のリュックを背負い前屈みで銀色の自転車を漕ぐ青年が
ちょうどクロスするように擦れ違う

少し離れたベンチには白い帽子とTシャツを着た丸い体型
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