夜に裂ける/ホロウ・シカエルボク
 
寧に貼り付けてくれた、俺は素直に礼を言った、いいえ、と女は笑って答えた、「店内を血塗れで歩かれても困りますので」「ごもっとも」俺は諸々の料金を払うと言ったが、女は断固拒否した、俺は支払いを断念した、「喧嘩ですか?」「自分とね」女は渋い表情を作った、「一回、病院に行った方がいいですよ」そんなに酷い怪我なのか、と俺は訊いた、女は右手で違う違う、というジェスチャーをして、ココロの病院、と真面目な顔で言った、えぇ、と俺は軽く異議を唱えたが、聞いてください、と女は真顔で続けた、「私の弟、精神病院で死んだんです、鉛筆で自分の頭を何回も刺して」俺は声を失った、「難しいかもしれないけど、誰かを頼ってください、絶対
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