IN THE DEAD OF NIGHT。──闇の詩学/余白論─序章─/田中宏輔
 
              (渡辺白泉)

菫程の小さき人に生れたし                                 (夏目漱石)

馬ほどの蟋蟀となり鳴きつのる                               (三橋鷹女)

一枚の落葉となりて昏睡(こんすい)す                                 (野見山朱鳥)

 他のものになりたい、いまの自分ではいられない、という強い気持ちが、他のものに生まれ変わりたいというこころからの願いが、言葉となって迸り出てきたものであろうか。引用した句のなかでは、とりわけ、はじめの三句に
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