IN THE DEAD OF NIGHT。──闇の詩学/余白論─序章─/田中宏輔
 
が、このような様相をもって彼に対峙していたように思われたのである。逆に見れば、三鬼という人間が、「すべての存在をただ自分ひとりのために変形するように見える精神を持ち、提出されるすべてのものに働きかける(ヽヽヽヽヽ)ところの、一人の人間」(ヴァレリー『テスト氏』テスト氏との一夜、村松 剛・菅野昭正・清水 徹訳)であったということであろうか。

 民喜もまた、そのような人間の一人であったに違いない。これを病的といえば、語弊は免れないかもしれないが、「病的なものからは病的なものしか生れ得ないということ」(トーマス・マン『ファウスト博士』二五、関 泰祐・関 楠生訳)はなく、そういったものが、「健
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