IN THE DEAD OF NIGHT。──闇の詩学/余白論─序章─/田中宏輔
 
リ・ブロンテ『嵐が丘』第九章、鈴木幸夫訳)と思われるところがあるからであるが、そういった人々は、「自分ではそれと気づかないで」(クリスティ『アクロイド殺人事件』23、中村能三訳)、「自分で自分の翼をもぎ取ってしまう」(ジイド『狭き門』村上菊一郎訳)のである。「敏感で繊細な気質のひとはいつもそうなのである。こういうひとの強烈な情熱は傷を与えるか屈服するかのどちらかにきまっている。本人を殺すか、さもなければみずから死に絶えるかのどちらかなのである。」(ワイルド『ドリアン・グレイの画像』第十八章、西村孝次訳)。まるで『イソップ寓話集』のなかに出てくる、自分の羽で殺される鷲のようなものである。「自意識とい
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