IN THE DEAD OF NIGHT。──闇の詩学/余白論─序章─/田中宏輔
 
存在することになったのか」(サルトル『嘔吐』白井浩司訳)。「魂はその存在の秘奥の叢林を分けて、層また層と、至りつくすべはないが、しかもたえず予感されている暗黒への道を降って行く。そこから自我が生まれそこへ自我が回帰する、自我の生成と消滅をつかさどる暗黒の領土、魂の入り口と出口、しかしそれはまた同時に、魂にとって真実な一切のもの、小暗い影の中に道を示す金色の枝によって魂にあかされた一切のものの入り口であり出口である。金色にかがやくこの真実の枝は、いかに力をつくしても見いだすことも折りとることもできないが、それというのも発見にまつわる天恵は下降にあたってさずけられるそれと同じ、自己認識の天恵なのだから
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