IN THE DEAD OF NIGHT。──闇の詩学/余白論─序章─/田中宏輔
す孤独になっていくのであろうか。ローマ人の手紙五・二〇に、「罪の増し加わったところには、恵みもますます満ちあふれた。」とある。
ここで、「私は彼の孤独を一つの深淵に比したいと思う。」(トーマス・マン『ファウスト博士』一、関 泰祐・関 楠生訳)、「人間は自己自身を見渡すことができない。」(G・ヤノーホ『カフカとの対話』吉田仙太郎訳)、「蟋蟀(こほろぎ)が深き地中を覗(のぞ)き込(こ)む」(山口誓子)ようにして、「自分自身のなぞのうえにかがみこむ」(モーリヤック『テレーズ・デスケイルゥ』五、杉 捷夫訳)ことしかできないのである。しかも、そこでは、つねに、「幾つもの視線が見張っ
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