IN THE DEAD OF NIGHT。──闇の詩学/余白論─序章─/田中宏輔
 
ないが、じっさい、彼は孤独であったと思われる。そうでなければ、「わたしの吐く息の一つ一つがわたしに別れを告げてゐるのがわかる。」(『鎮魂歌』)といった言葉など書くことはできなかったであろう。「詩人は同時代人たちのさなかにあって、真理と彼にそなわる芸術とのゆえに孤独な境遇にある」(エマソン『詩人』酒本雅之訳)。
 レイナルド・アレナスの『夜明け前のセレスティーノ』(安藤哲行訳)のなかに引用されている、ポール=マルグリットの『魔法の鏡』に、「わたしの孤独には千の存在が住んでいる」といった言葉があるが、孤独になればなるほど、同化能力が高くなるのであろうか。それとも、同化能力が高まるにつれて、ますます孤
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