IN THE DEAD OF NIGHT。──闇の詩学/余白論─序章─/田中宏輔
 
まった。あたりは今、妙にひっそりしてゐたが、枯木にゐる鳥はゆっくりと孤独を娯しんでゐるやうに枝から枝へと移り歩いてゐる。その落着はらった動作は見てゐるうちに羨しくなるのであった。かういふ静かな時刻といふのも、あるにはあったのか。彼はその孤独な鳥の姿がしみじみと眼に沁みるのだった。

 去年、私ははじめて上野の科学博物館を見物したが、あそこの二階に陳列してある剥製の動物にも私は感心した。玻璃戸越しに眺める、死んだ動物の姿は剥製だから眼球はガラスか何かだらうが、凡そ何といふ優しいもの静かな表情をしてゐるのだらう、ほのぼのとして、生きとし生けるものが懐かしくなるのであった。

 肉はじりじりと金
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