IN THE DEAD OF NIGHT。──闇の詩学/余白論─序章─/田中宏輔
安心だと思っていたからである。何ものかの気配を感じて眠れなかったのである。いまでも電灯を消してしまうと眠ることができないのは、何ものかの気配を感じてしまうからである。ふつう、大人になると、自分の部屋のなかの闇を怖がったりはしないものだと思われるのだが、それは、そこに何ものかがいることを感じることができないからであろう。子供のころのわたしが、闇そのものの怖さを感じていたのかどうかは、いまとなっては思い出すことができないのだが、闇のなかに潜む何ものかの気配を感じて怖がっていたことだけは、たしかに憶えている。
わたしが詩を書きはじめたころ、だいたい一九九〇年ごろのことで、ずいぶん以前のことだが、
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