IN THE DEAD OF NIGHT。──闇の詩学/余白論─序章─/田中宏輔
 
、子供というものは、何にでも驚くものである。「愚鈍な人間は、どんな話を聞いても、よくびっくりするものだ。」(『ヘラクレイトスの言葉』八七、田中美知太郎訳)というが、子供が驚くのは不思議でも何でもない。知らないからである。成長するにつれて、驚くことが少なくなっていく。知っているつもりになるからである。子供はまた、よく怖がるものである。とりわけ、闇を怖がる。少なくとも、わたしはそうであったし、いまでも、そうである。いまだに電灯を点けたままでないと眠れないのである。子供のころ、母親がわたしの部屋の電灯を消して、部屋から出て行った後、布団を被らなければ眠れなかったのである。同じ暗闇でも、布団さえ被れば安心
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