IN THE DEAD OF NIGHT。──闇の詩学/余白論─序章─/田中宏輔
 
った言葉が思い出されたのだが、それは、結局のところ、語の選択や、語と語の結合といったものが、そして、その配置や全体の構成といったものが、文学作品のすべてであるということを、改めて、わたしに思い起こさせるものであった。

 魚村の歌には、目を瞠らされた。自分のほかには、だれもいない病院の玄関先で、これまた吼えもしない、おとなしい犬を眺めながら、ぼうっとしているような冬日和の静かな街角。その街角の風景のなかで、海だけが動いている。これまた静かに、ひたひたと破滅の音階を携えながら、といった映像が思い浮かんだ。山が動く、森が動いてくるというのは、聖書やシェイクスピアにもあった。海が近づいてくるというイ
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