IN THE DEAD OF NIGHT。──闇の詩学/余白論─序章─/田中宏輔
 
好みである。つぎの三首もまた、同様の傾向のものである。

憂鬱の鳥が頭上にあらはれてふたりの肌のにほひをかへる                    (林 和清)

言霊の子は森といふ文字バラバラにひきはなしたりもどしたり                 (笹原玉子)

冬日和 病院にゐて犬がゐて海もそこまで来てゐるらしい                  (魚村晋太郎)

 林の歌からは、「鳥が来ては、わたしの魂を、他のだれかの魂と取り換える。」といった言い回しを思いついたのだが、イメージ・シンボル辞典を引くと、「飛び立とうとしている鳥、または翔んでいる鳥は魂の実体化したもの。」
[次のページ]
戻る   Point(11)