THE GATES OF DELIRIUM。/田中宏輔
 
らを互いに矛盾させることなく、一人の人間の記憶として容易に再構成させることができないからでもあろうし、また、物語を読者に面白く読ませる必要があって施された処置でもあろうけれども、しかし、もっとも論理的ではないと思われるところは、宿主となっている人間の内面の声と、寄生している人間の内面の声が、宿主のただ一つの心のなかで問答することができるというところである。まるで複数の人間が、ふつうに会話するような感じで、である。この手法は、ロバート・A・ハインラインの『悪徳なんかこわくない』で、もっとも成功していると思われるのだが、たしかに、物語を面白くさせる手法ではある。また、このヴァリエーションの一つに、シオ
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