THE GATES OF DELIRIUM。/田中宏輔
 
シオドア・スタージョンの『障壁』というのがある。これは、一人の人間のある時期までの人格や記憶を装置化し、それを用いて、その人格や記憶の持ち主と会話させる、というものである。これを少しくは、ある意味で、自己との対話といったところのものともいえるかもしれないが、しかし、これを、まったきものとしての、一人の人間の内面における自己との対話とは、けっしていうことはできないであろう。話を『いまひとたびの生』に戻そう。この物語では出てこない設定が一つある。生前の詩人がいっていたのだが、もしも、自分の人格や記憶を自分の脳の内部で甦らせればどうなるのか、というものである。はっきりした記憶は、よりはっきりするかもしれ
[次のページ]
戻る   Point(15)