THE GATES OF DELIRIUM。/田中宏輔
の表紙絵をじっと見つめているときに、わたしが、「女性の頭のところに、死に神がいますね。」といったことがあった。わたしは、その死に神について、詩人が、なにか、しゃべってくれるのではないかと思ったのである。しかし、期待は裏切られた。詩人は、「えっ、なになに?」といって、真顔で、わたしに尋ね返してきたのである。そこで、わたしが、もう一度、同じ言葉を口にすると、詩人は、「ああ、ほんとうだ。」といって、笑いながら、しきりに感心していたのである。わたしには不思議だった。その絵を見て、女性の頭のところにいる死に神の姿に気がつかないことがあるとは、とうてい思えなかったからである。なぜなら、その絵のなかには、その死
[次のページ]
戻る 編 削 Point(15)